好酸球性食道炎の症状と治療方法について【2025年版】
好酸球性食道炎は、食道に好酸球と呼ばれる白血球が集まり、炎症を引き起こす慢性疾患です。喉のつかえ感や嚥下困難などの症状が現れ、アレルギー体質の人に多く見られます。診断には内視鏡検査と生検が用いられ、治療には食事制限やステロイドの服用が含まれます。日本でも専門医による診療が増えており、患者の生活に合わせた個別の対応が行われています。日常生活の工夫と医師の指導により、症状のコントロールが可能です。
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嚥下困難(飲み込みにくさ)
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食べ物が喉につかえる感覚(食道閉塞感)
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胸やけや胸痛
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吐き戻し(特に小児に多い)
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食事中の不快感
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食事量の減少や体重減少
特に成人では「食べ物が喉を通らない」という症状が特徴的で、固形物を飲み込む際に問題を感じることが多いです。小児の場合は、食べ物の拒否や吐き戻しといった症状が見られることがあります。症状の重症度は人によって大きく異なり、軽度の不快感から深刻な嚥下障害まで様々です。
診断に使用される検査内容とその流れ
好酸球性食道炎の診断には、複数の検査が段階的に行われます。診断の流れは以下の通りです:
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問診と身体診察: 症状や既往歴、アレルギー疾患の有無などを確認します。
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上部消化管内視鏡検査: 食道の状態を直接観察します。好酸球性食道炎では、輪状の溝(リング状変化)や縦走する溝(縦走溝)、白色の滲出物(白斑)などの特徴的な所見が見られることがあります。
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食道生検: 内視鏡検査時に食道の組織を少量採取し、顕微鏡で観察します。1視野あたり15個以上の好酸球が確認されると、好酸球性食道炎の診断基準を満たします。
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アレルギー検査: 特定の食物や環境アレルゲンに対するIgE抗体を測定し、原因となるアレルゲンの特定を試みます。
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除外診断: 好酸球性胃腸炎や胃食道逆流症(GERD)など、類似の症状を示す疾患との区別が重要です。
これらの検査結果を総合的に判断し、専門医が診断を確定します。特に生検による組織学的評価が診断の確定に重要な役割を果たします。
食事制限や薬物による治療法の種類
好酸球性食道炎の治療は、主に以下の3つのアプローチに分けられます:
1. 食事療法
食事療法は、特にアレルゲンが原因と考えられる場合に有効です。主な方法として:
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経験的除去食: 最も一般的なアレルゲンである乳製品、小麦、卵、大豆、ナッツ類、魚介類などを段階的に除去します。
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アレルギーテスト指導型除去食: アレルギー検査で陽性反応が出た特定の食品を除去します。
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元素栄養療法: 特殊なアミノ酸ベースの栄養剤のみを摂取し、すべての食物アレルゲンを排除する方法です。重症例や他の治療が効かない場合に検討されます。
2. 薬物治療
薬物治療の中心は以下の通りです:
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局所ステロイド薬: 喘息治療用の吸入ステロイド薬を嚥下することで、食道の炎症を抑えます。ブデソニドやフルチカゾンが主に使用されます。
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プロトンポンプ阻害薬(PPI): 胃酸の分泌を抑え、食道の炎症を軽減します。
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生物学的製剤: 重症例や従来の治療に反応しない場合、特定の免疫経路を標的とした生物学的製剤が検討されることがあります。
3. 拡張術
薬物療法や食事療法で改善しない狭窄がある場合、内視鏡による拡張術が行われることがあります。バルーンや拡張器を使用して、狭くなった食道を広げる処置です。
治療選択は患者の年齢、症状の重症度、合併症の有無、患者の希望などを考慮して個別に決定されます。多くの場合、複数のアプローチを組み合わせた包括的な治療計画が立てられます。
日常生活での注意点や再発予防のポイント
好酸球性食道炎の症状コントロールと再発予防のために、以下のポイントが重要です:
食事の工夫
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ゆっくり食べる: よく噛んで、小さな一口ずつ食べることで嚥下困難を軽減できます。
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食事日記をつける: 症状を誘発する食品を特定するため、食べたものと症状の関係を記録します。
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水分摂取: 食事中に十分な水分を摂ることで、食べ物の通過をスムーズにします。
生活習慣の改善
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アレルゲン回避: 特定された食物アレルゲンだけでなく、環境アレルゲン(ハウスダスト、花粉など)の暴露も最小限に抑えます。
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ストレス管理: ストレスが症状を悪化させる可能性があるため、適切なストレス管理法を取り入れましょう。
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定期的な通院: 症状がなくても定期的に医師の診察を受け、必要に応じて内視鏡検査や生検による評価を行います。
緊急時の対応
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食物が詰まった場合の対処法を家族や周囲の人と共有しておきましょう。
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症状が急激に悪化した場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
心理的サポート
慢性疾患を抱えることによる不安やストレスを軽減するために、患者会や専門のカウンセリングを活用することも検討しましょう。
まとめ
好酸球性食道炎は、適切な診断と治療によって症状をコントロールすることが可能な疾患です。食事療法や薬物治療などの治療法が進歩し、多くの患者さんが症状の改善を実感しています。定期的な医師の診察を受けながら、自分に合った食事や生活習慣の工夫を取り入れることが重要です。また、近年は新たな治療法の研究も進んでおり、今後さらに治療の選択肢が広がることが期待されています。症状に心当たりのある方は、早めに消化器内科や耳鼻咽喉科の専門医に相談することをお勧めします。
※この記事は情報提供のみを目的としており、医学的アドバイスを提供するものではありません。診断や治療については、必ず資格を持つ医療専門家にご相談ください。